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1on1の継続で社員の自己実現を達成する──長期的視点で取り組むキャリア形成施策

・ 2022/03/28 更新 ・ TeamUp

人材育成に力を入れ、常に先進的な人事施策に取り組んできた東急株式会社様では、人材戦略室でのトライアルを経て2021年から1on1を導入しています。20年以上前から社員のキャリア形成の支援に取り組み、8年前からはダイバーシティマネジメントを行うなど、時間をかけて組織づくりをしてきた同社の1on1について、話を伺いました。

東急株式会社 人材戦略室 人事開発グループ 人事担当
課長代理 西本 雅彦 様
主事 大木 賢 様
主事 加藤 里菜 様

1on1を活用し、社員のキャリア形成をサポート

━━まずは、貴社で実施されている1on1の対象者や実施頻度などを教えてください。

加藤:当社の1on1は、本社所属の全社員を対象としています。(官公庁への派遣者、一部出向者も対象に含む。)実施頻度は四半期に1回で、時間は30分程度。2020年11月から2ヶ月間トライアルを行い、2021年6月に全部署に導入しました。3ヶ月後の9月からは、管理職間でも1on1を実施しています。

━━四半期に1回という頻度は、どのような経緯で決められたのでしょうか。

一般的に、1on1は週に1回、月に1回など高い頻度で行われることが多いと思います。しかし当社の場合は過去の取り組みや毎年行っているエンゲージメント調査等で、日頃のコミュニケーションはしっかり取れていることがわかっていましたので、1on1の目的や上司の負担を考えて四半期に1回としました。

━━1on1の導入前に抱えていた課題や、人事として解決したいと考えていたことなどはありますか。

大木:当社では以前から人事考課のフィードバック面談が年に2回行われていたのですが、この面談には2つの課題がありました。1つ目は、面談で話す内容が上司によって様々であるということ。しっかりフィードバックをしている人もいれば、ただ単に評価を伝えるだけという人もいるという状況だったため、もっと質の高い面談にしたいと考えていました。

そしてもう1つは、人事考課のフィードバックのタイミングです。本来であれば、上期が終わったら面談をして、その時のフィードバックを基に下期の行動を決めるという流れが理想ですが、当社の場合は考課の確定後に面談を行うため、上期のフィードバックが11月下旬、下期のフィードバックは6月と、次の期に入ってから2ヶ月も過ぎている状態でした。

━━上司からのフィードバックを次の行動につなげたくても、タイムラグがあるためにそれが難しい状況だったのですね。他にも1on1に期待していたことや、1on1を軸にしてやってみたいことなどはありますか。

大木:社員が自分のキャリア目標を上司に共有することで、上司がサポートしやすくなること、そしてそれによって社員が自己実現しやすくなることを期待していました。1on1は上司主導ではなく部下が起点になっているため、自分のことを上司に話しやすいというのもメリットの1つですね。

今後1on1を軸に取り組んでいきたいことは、個人のキャリア形成の強化です。1on1を通じて、上長と自身のキャリアについて話すプラットフォームは設計できたので、今後はその場をより有意義なものにするための取り組みに注力したいと考えています。今も自身の積み上げてきたキャリアを棚卸したり、今後のキャリアプランを申請する仕組みはあるのですが、それらを上長・部下間で総合的に活用する場面はあまりありませんでした。1on1を基軸に、当社のキャリア施策の横串を刺すことができれば、より従業員1人1人が自身のキャリアを自律的に考え、実践することができると考えています

社内の反応は予想以上に好感触

━━1on1はまだまだ日本では先進的な取り組みなので、社内ではポジティブな意見をお持ちの方ばかりではないと思います。貴社の場合は、どのようにして1on1導入の合意を得られたのでしょうか。

大木:トライアル前には「今のフィードバック面談でいいのではないか」という懐疑的な声も出ていましたが、トライアル実施後の管理職からの反応は概ねポジティブなものでした。当社では、キャリア目標について上司と部下で話し合うという取り組みを1999年から行っており、もともとコミュニケーションを大事にする文化があるというのが理由の1つなのではないかと思います。またこれまでは部下と上司のどちらかが異動するとこれまで話してきていた内容が分からず一からやり直しとなってしまいましたが、過去の1on1も確認できることでこれまでよりも効果的に部下のキャリア支援ができる可能性が感じられたことも合意を得られた理由だと思います

加藤:タイミングも良かったですね。昨年から、「”個”の最大化」という人材戦略のコンセプトを掲げているのですが、1on1がこのコンセプトに合っているというのも功を奏していると思います。どの部署でも1on1に丁寧に取り組んでいて、TeamUpのシステムに記録を細かく入力してくれています。

━━社員の皆様がTeamUpをしっかり活用してくださっているということですが、そもそも1on1の導入にあたり、どのような理由からTeamUpを選んでくださったのでしょうか。

大木:まず、異動で上司が変わっても記録がそのまま引き継がれるということ、そして入力が簡単であることが、ツール選択の決め手になりました。

当社では以前からコミュニケーションの活性化に取り組んでおり、過去には面談のたびに上司が入力して提出する「コミュニケーションシート」というものが使われていた時期もありました。しかし、シートが作りこまれていたため、本来の目的であるキャリア支援や成長支援に対してシートを記入することの負担感が大きくなってしまい「コミュニケーションシート」を撤廃したという経緯があります。この経験から、負担感が大きいと本来の目的よりもやることが目的となってしまうと考え、「記録をきちんと残せて、かつ入力が簡単なシステム」という要件を満たすツールを探し、もっとも良いと評価されたTeamUpを導入することに決めました。

━━導入後の社内の反応はいかがでしたか。

西本:人事の施策は性質上どうしても「会社からやらされている」というイメージを持たれやすいのですが、1on1に関しては部門長クラスからも一般社員からも好評です。トライアルでの結果もあり好感触を得られるだろうとある程度予想していましたが、思った以上にポジティブな反応が多いですね。

加藤:そうですね。アンケートや個人的な会話などからも、1on1をやって良かったという声が多く聞かれています。

━━1on1のような「人への投資」はどうしても緊急の業務より後回しにされてしまいがちなのですが、貴社の場合は1on1の実施率が高く、記録もきちんと入力されています。成功している要因はどこにあるのでしょうか。

加藤:いつ1on1を実施して、いつまでに記録を提出するといったスケジュールは人事から発信していますが、特に細かくリマインドをしたりはしていません。ただ、これまで長い年月をかけてコミュニケーションの活性化に取り組んできていますので、「対話をするのが当たり前」という雰囲気が社内に根付いていることが1on1に取り組む姿勢に影響しているのではないでしょうか。

一方で、少数ではありますが「1on1をしなくてもコミュニケーションは取れている」という意見もありますし、またキャリア形成に関しては、1on1を始めてから日が浅いためまだ結果として見えてはいません。1on1にメリットを感じていない層には、長い目で見て対話を継続することが重要だという発信を続けていく必要があると思っています。

━━皆様のお話から、何があっても1on1を続けるという熱意が感じられます。何がその強い意志の原動力になっているのでしょうか。

加藤:1on1の取り組みは、人材戦略のコンセプトに合致した、いわゆる肝になる施策です。ここで折れてしまうと大前提としての目標を放棄したことになるため、社員に「自律的キャリア形成に役立った」と感じてもらえるまで腹を据えて継続していかなければなりません。それが、私たちの強い意志に繋がっているのだと思います。

西本:そうですね。そして今回のコンセプトには、先行きが不透明な社会情勢で不安に思っている社員を元気付けたいという目的もあります。社員のために折れずにやり抜こうと一丸となって取り組んでいるため、その意気込みも原動力になっていますね。

目標は、多様な個性を尊重し、社員の自己実現をサポートできる組織づくり

━━今後1on1を継続していくことで、どのような組織にしていきたいとお考えですか。

西本:人材戦略室では現在、「”個”の最大化」というコンセプトを打ち出しています。当社では、多様な人材が活躍できる仕組み作りをしようというダイバーシティマネジメントの推進に2013年から取り組んでおります。6年が経過し1日2時間または週休3日を限度として、就業時間や日数を短縮する 「Y職責」やテレワークの導入など働き方の拡充を進めてきましたが、より多様な個への対応が必要だと考え2020年に新たな人材戦略に進化させました。今後はより一層個に焦点を当てることで1人1人がより活躍できる組織にしていきたいと考えています。

社員それぞれが持つ多様な個性を活かし、全員が成長して自己実現できる組織にする。そして、その結果として会社全体の「変革」に繋げていくというのが、人事としての大きな目標です。

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